2010年8月31日火曜日

ミラン・クンデラ著、千野栄一訳『存在の耐えられない軽さ』(集英社文庫, 1998年)

 異邦人のように世界は神によって正しくつくられた(ゆえに糞のようなものは存在しない)という原則に同意しているわけではない人々とそうでない人々の葛藤を描く。その中心には愛がある。それは一言では言えない。

以上100文字。

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 本著は希代のプレイボーイであるチェコの優秀な外科医と、彼の妻(ただし、二番目)、愛人(及びその愛人)の三者を中心にした人間模様を描く恋愛小説であり、プラハの春前後のチェコを描く時代小説でもあり、二つのメタファを描くためのメタファが凝縮されているメタファ小説とも言える。
 メタファの第一は、主人公を含めた登場人物が全て何かしかの主題を背負わされ、動かされている。その経緯と、契機と、経過から登場人物の愛もしくは人生と、あるいはその失敗を読者は読みとるだろう。
 メタファの第二は、著者が「俗悪なるもの」と呼び表す概念についてである。この「俗悪なるもの」について著者は批判しているが、それは人間の条件でもあると認めている。
 人間とは、なんと、矛盾しつつ、多角的なものなのだろう。

以上、333文字

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